百年前新聞

2018-04-25

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世界大戦後の方策を研究すべき

大正4年10月9日

欧州の戦乱は、まだ講和の時期に至っていない。交戦中の諸国が、財政および軍需品の準備を来年度まで周到な準備を始めていることは、戦争が長引くことを覚悟しているのであろう。

直接戦乱の渦中に捲き込まれず、輸出増進、債券増加の好機会を捉えたのは、アメリカと日本のみである。
アメリカはこの機会に、ニューヨークを世界の金融の中心としようとし、戦後に東洋の市場にまでも飛躍しようと準備している。
では日本を見ると、政治家、学者、実業家ともに、戦後の対外貿易促進策などは一向に研究されていない。国内の企業の方針、政府の産業奨励の根本をいかに定めるか、研究を要する大問題であり、実行に着手すべき時機である。

だが我が国の政治家と称する者は、国政の論議よりも党争を重視している。高遠の理想を口にする大隈内閣は、米価調節の拙策の上塗りをしようとしている。
戦後になれば、英米独仏が極東に対して、捲土重来的に競争を開始することが予想されるが、これらに対しては依然として無方針、無定見である。

イギリスでは、平年の3倍にあたる大輸入超過となっている。フランスでも大幅な輸入超過となっている。封鎖の中にあるドイツは言うまでもなく、ロシアの貿易も悲惨である。
これに反して、アメリカの貿易は月々に激増し、大幅な輸出超過となっている。よって欧州の戦乱が長引くものとすれば、世界の貿易関係、金融関係は大変動するだろう。

実際問題として、もし今から半年後に平和交渉に移ったとしても、そこからさらに1年から1年半は講和に時間がかかり、戦時状態が続くだろう。交戦国の疲弊の程度はどのぐらいか、数種類の仮定によって、国別に財政と経済の回復力を研究し、我が日本帝国の世界経済の方略を立てる必要がある。既にその準備に着手する時である。

日本の商工業者は、戦乱がいつ終わるか見当もつかないと手をこまねいて傍観し、何らの企画も行っていない。政党は、党争ばかり行っている。政府はまた、戦後の産業の大方針を全く考慮していないように思える。

日本人にとっての米価は、二千年来の問題であるのに、今さら米価調節委員会に70人の委員を任命し、研究を開始しようとしている。戦後の産業方針に関しては、今なお問題となっていない。

天の与えた富国の好時機を空費して、不急の増師、増艦に対しては議員買収までの醜態をさらし、戦後の大方針に関しては今なお問題となっていない。筆者は、ますます政府の行動に対して、理解に苦しむ。

(大正4年10月9日大阪朝日新聞社説要約)


索引語:第一次世界大戦 産業 政治

Posted by 主筆 at 2015/10/09/10:37

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