百年前新聞

2018-01-24

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)1月1日

大正5年1月1日

大阪朝日新聞 初詣で (摂津住吉)


大正5年(1916年)1月1日の出来事

【生活】元旦の様子(初詣、宮中拝賀、小学校、海軍)
【中国】洪憲元年
【年頭所感】中華帝国首相 陸 徴祥 日中両国の関係
【年頭所感】高田早苗文部大臣 国字国文改良の急務
【年頭所感】与謝野晶子女史 婦人にも教育が必要
【ドイツ】スパルタクス団結成

国内

大正5年 元旦の様子

大正5年の元旦は、東京はあいにくの雨でした。
初日の出も見られず、初荷もあまり盛り上がらないものとなっています。

穴守稲荷、川崎大師への初詣客が多く、京浜電車はすし詰めの満員となりました。

宮中拝賀

午前中は、皇族、松方正義侯爵、東郷平八郎大勲位、大隈重信首相など。
午後は、各国の大使、公使が拝賀に訪れています。

小学校の様子

多くの小学校は、四方拝(*四方の神を拝する)を行なっています。

君が代の合唱、校長先生の勅語奉読、年頭の訓話が終わると、児童は自分の教室に向かいます。

机の上には、「奉祝・新年」の文字が入った紅白の菓子と、年賀状が置いてあります。
年賀状は年末に書いておくと、学校の先生が振り分けてくれます。

海軍の様子

各戦艦では、時刻を知らせる鐘を、除夜の鐘として突いています。
除夜の鐘を突くと美人の妻がもらえる、という伝説があり、鐘を突きたいという希望者が多く、競争になっています。

朝9時45分に、東京の方を向いて君が代を奏楽し、遥拝式を行ないます。

元旦は船上でも、雑煮や酒も出て、芸達者な水兵が手品、義太夫、演劇を行なうこともありました。

年頭所感

中国の国務卿(首相)陸 徴祥氏、高田早苗文部大臣、与謝野晶子女史が、新年にあたり新聞に寄稿しました。 (*長いので、最後に掲載しています)

海外

中国は洪憲元年

袁世凱が皇帝に就任し、中華帝国となったことで、1916年1月1日は「洪憲」元年となりました。

ただ上海の新聞紙を見る限りでは、洪憲の元号を用いているのは一紙のみで、残りの新聞はすべて「中華民国5年1月1日」の日付を用いています。


読売新聞の行事案内

このとき

スパルタクス団の結成


カール・リープクネヒト

戦争に反対するドイツの社会民主党左派が、カール・リープクネヒトの邸宅に集まり、ローザ・ルクセンブルクが起草した指針を採択、「スパルタクス書簡」という非合法の冊子を発行することを決定しました。

この冊子の名前により、この集団はスパルタクス団と呼ばれることになります。(ドイツ共産党の母体)

(*スパルタクスは、ローマ時代に奴隷の反乱を率いた剣士の名前。当時の社会主義者からは、抑圧からの解放を求める象徴とされていました。)

駅名変更

鉄道院により、「一ノ宮駅」の重複を避けるため、駅名の変更が行なわれました。(駅名の前に旧国名を付ける)

長門一ノ宮駅
尾張一ノ宮駅
上総一ノ宮駅
三河一ノ宮駅

その他の出来事


ラス・ラハス教会(ウィキスペイン語版より)

・中央報徳会(*地方改良団体)に青年部が設立される。内務大臣一木喜徳郎が関係する半官半民団体で、二宮尊徳の考え方を元にした団体です。

・アメリカで14年ぶりにローズ・ボウルが再開。東西対抗大学アメフトの始まりです。

・コロラド、サウスカロライナ、ワシントン、オレゴン、アーカンソーの各州で、禁酒法が発行。

・ブラジルで、初の民法が公布。

・コロンビアで、渓谷の上の教会「ラス・ラハス教会」の建設が開始。(完成1949年)

誕生日

ピエール・ド・クーベルタン  国際オリンピック委員会会長 52
杉山 元  インド駐在武官 36
鳩山 一郎  衆議院議員(政友会) 33
中島 知久平  海軍機関大尉 飛行機設計中 32
ヴィルヘルム・カナリス  ドイツ海軍大尉 スペインで工作任務 29
津島 寿一  大蔵省官僚 28
阪本 清一郎  東京工科学校学生(おそらく) 24
石川 信吾  海軍少尉 22
エドガー・フーヴァー  大学生 21
杉原 千畝  愛知県立第五中学学生 16

年頭特集


大阪朝日新聞

中国国務卿(首相)陸 徴祥: 日中両国の関係 (要約)

余が外交官の時に、最も交際したのは日本の外交官だった。これは同じ東洋の国であり、同種同文(*漢字)の関係があるからである。

日本と中国の政府間には何らの誤解もないが、国家と国家として真に提携するためには、両国民が親善の関係を持つことである。

国民相互の融和の方法には、実業が最も有力な手段で、日中両国の実業家が互いに往来し、協同事業を計画することである。

また、すべての国民同士が交際することは不可能であるため、国民の誤解を解く手段として新聞が大きな力を持っている。日本で最も有力な新聞の新年号において、新聞紙がますます中国の研究に努力されんことを希望する。

中国は民意に従って帝国となり、日本は先進の帝国であり、中国は日本に範をとる必要を感じている。中国の今日の状態は、日本維新早々の状態と変わらず、中国は努力奮励し、強固なる基礎を固める必要を痛切に感じている。

大隈首相は78歳の高齢で、かくしゃくとして政務にいそしんでいて感嘆に堪えない。余は未だ45歳、年月を重ねて国家に貢献が出来れば本懐である。

国字国文改良の急務: 高田早苗文部大臣(早稲田大学名誉学長) 要約


ウィキペディアより

日本が最近、世界の国民から強い期待と少なからぬ好意を得てきているのは、喜ぶべきことである。だが、ヨーロッパ人、アメリカ人は、まだ日本人の真相を理解していない。

なぜ日本が理解されていないかと言うと、言うまでもなく国語、国字の罪である。自国人でありながら、名前の読み方さえ正確にわからぬ文字を使っているからである。

そして、日本の子ども、青年は、この漢字教育のために、莫大な損失を招いているのである。

我輩は、ローマ字採用に大賛成である。が、物事には順序というものがあり、この意味から最近文部省内に、国字国語の調査部なるものを設置して、この方面の改善に一歩を進めたいと思う。

戦争に強いばかりが、国民としての能でもあるまい。今後の日本は、文学、宗教、工芸、美術においても、卓越した地歩を獲得しなければならない。

文字の改良、国語の改善は、実に今日の日本の一大急務である。

婦人にも教育が必要: 与謝野晶子女史 要約


ウィキペディアより

我が国の婦人界を7、8年前と比較すると、その変化の大きさに驚かされます。

あの頃は世界の大勢と逆行し、旧式な良妻賢母主義が流行し、女性教育家たちも「べからず訓10か条」を制定する状態だったのです。
現在では文部大臣が女子大学の必要性を言い、「途中で会う男子に目も触れるな」と、ベからず訓を作った制定者たちが、通行の男子に呼びかけて花を売るというありさまになってきています。(*花の日会 嘉悦 孝 主催)

現在の婦人界では、いわゆる「新しい女」によって自由思想が喧伝され、世人の注意を引いているようですが、社会的および科学的知識の大計を備えているものではないのです。

それらが注意を引くのは、彼女達の大胆な発言と、男子側の識者が欧米から得た新知識によって婦人運動に好意を持つのと、若い男女が旧思想に対抗する反動する心理があるからだと思います。

私は自由思想に目の開きかけた中流女性がいることを知っています。「新しい女」と目されている人達よりも、教育があり、徳操があり、見識があり、社会的経験のある人がいることを発見しています。

それらの婦人たちが団体的勢力を作って先頭に立つなら、その結果は「新しい女」たちに数倍すると思いますが、そういう人たちは家庭の人になっていて、社会的に活動する勇気をもっていません。

それなら肝心の家庭がどうなっているかというと、やはり在来の習慣に妥協し、無反省に日を送っていくようです。

私は過激な言動が改革者の言動とは思いませんが、こういう穏健な、悪く言えば煮え切らない傾向も歯がゆく感じます。

私たち日本婦人は、おそまきながら、今こそ一斉に目を覚まして、自分自身を反省せねばならない時です。なんのために生きているかを知らず、盲目的に生きていた私たちは、何よりもまず自分の生きていきたいと望む意欲が基礎であり、それを実現することが人生の目的であることを、徹底して知らなければなりません。

野蛮時代には人間の強弱を腕力で測りました。けれど今では、主として智力の多少が人類を強くも弱くもすることになりました。

このたびの大戦争(*第一次世界大戦)などは、どう考えても一事の変調であって、将来は時代遅れの武断主義者を除く以外ありません。また現在の武力も、裏面では智力が支配しており、今後の強弱は智力の多少が最大要素です。

女の無智は、今さらのことではありません。女が饒舌だということも、原因は無智にあります。女が感情的だというのも、智力を欠いているからです。

それで私たち女性は、何より智力の優強者とならねばなりません。女が男子と対等な地位に進むためにも、まず智力において対等の強さが必要です。

これは男子の側から言っても、真の伴侶が出来ることで、当然歓迎されるものだと思います。真の聡明な男子であれば、きっと私共に対して厚意の助勢を惜しむことはないと思います。

私がたびたび述べることですが、女の読みものとして書かれた低級なものばかりを読むのは、大人が子供のおとぎ話を読みふけるのと同じく、自分をわざわざ低能化しつつあるのだと思います。
女性は婦人に関するある特殊な書物以外は、なるだけ男の読み物を読む習慣をつけて、現代人として対等にしようとしなければなりません。

婦人に読書を進めることに対し、婦人を家政から遠ざけるものだとの非難があるかもしれませんが、近頃米国で婦人の参政権を許した各州の成績では、家政をおろそかにした婦人は一人もなかったといいます。

智力の優った米国人の行為を、私どもが一足飛びに真似することは困難でしょうが、心がけ次第で十分家事と並行させることができると確信しています。

婦人の智力の向上は、婦人自身の発奮がなにより大切ですが、周囲もまた男女に過度な区別を設けないよう、配慮をお願いしたいと思います。


大正少年双六(少年世界1月号付録) 三重県立博物館HPより

編集後記

あけましておめでとうございます。

元旦の新聞は、現在のように数冊に分かれているほどのボリュームはありませんが、元旦っぽさがありますね。

1月1日ということで、区切りが良いのか、いつもよりも細かな出来事がたくさんあります。


中国の首相が寄稿しているというのは、さすが朝日新聞です。
内容は、かなり日本を持ち上げる内容になっていて(歯が浮くような、と言っても良いぐらいです)、当時の国際関係がよく分かります。日本(および列強)はまだ、中国の帝制への承認を行なっていません。

高田文部大臣の寄稿も、やや論旨が強引な感じがしますが、この頃はローマ字変更論が真面目に議論をされていました。当時の日本語が難しすぎるというところはありますが、ローマ字にならなくて良かったと、僕は思います。
漢字は便利ですよ、高田さん。

与謝野晶子さんの寄稿も、熱いです。女性の権利獲得の勃興期ですね。
あれこれ述べられていますが、100年後の世界を与謝野晶子さんに見せてあげたい気がします。達成されたことの方が多いですが、あまり変わってないところもあります。

女性だけじゃなくて、男性像も大きく変わってきているので、さぞかしびっくりされるんじゃないでしょうか?


本年の皆様のご健勝、ご多幸をお祈り申し上げます。


索引語:皇室 生活 教育 海軍 中国 思想 ドイツ 地方 鉄道

Posted by 主筆 at 2016/01/01/01:09

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