百年前新聞

2018-04-22

百年前新聞とは?

婦人公論創刊号、横井時敬が軍隊と農業を語るほか

大正5年1月10日

創刊号の新聞広告


【外交】ロシア大公の滞在予定発表
【海軍】水兵10名が溺死
【社会】婦人公論創刊号の評価
【社会】農学博士横井時敬が軍隊と農業を語る
【中国】雲南省独立続報

国内

ゲオルギー・ミハイロヴィチ大公の滞在予定


ミハイロヴィチ大公

大正天皇の即位を祝うロシア使節ゲオルギー・ミハイロヴィチ大公は、本日は小豆島で投錨されました。

香川県知事が御召艦鹿島を訪問し、盆栽2鉢を献上。大公は盆栽について興味深く話を聞いています。
小豆島からは、醤油一樽とそうめん二箱が献上されています。

小豆島ではかがり火を炊いて、大公を歓迎しました。

鹿島の艦内では、相撲、柔道、撃剣が披露され、大公の目を楽しませています。

宮内省発表の御滞在日程

11日 神戸着
12日 東京着、御参内、宮中で晩さん会
13日 皇族、各大使館訪問
14日 上野博物館など
15日 浜離宮、前田侯爵邸など
16日 日光
17日 日光から帰京
18日 軍隊学校、砲兵工廠訪問
19日 鎌倉
20日 告別の御参内
21日 移動
22日 箱根遊覧
23日 京都、大阪
24日 京都
25日 奈良
26日 移動
27日 下関発で帰国

人事往来

大隈首相が参内し、天皇陛下に脚部の痛みが全癒したことを報告しています。また、新年の御祝賀を述べました。

山県有朋公爵は小田原の別荘を出て、東京に入りました。ロシア大公殿下を出迎えるためです。

海軍の水兵が溺死


大阪朝日新聞

1月9日の午後6時40分、南洋交通船御吉野丸が、南洋諸島に派遣されていた海軍防備隊の交代兵41名(横須賀海兵団所属)を乗せて横浜港に入りました。

当局の許可がおりて夜11時頃、41名の水兵が3回に分かれて上陸。始めの2回は無事に上陸しましたが、第3回目で雨まじりの南西の強風をうけ、船員10名を乗せた船が転覆してしまい、全員が海に落ちてしまいました。

急報を受けて海軍で捜索活動をしていますが、10日の朝になっても1人も発見出来ていません。海軍ではなおも捜索中ですが、冬の海でもあり、全員が溺死したと思われます。

婦人公論の創刊号評

中央公論社が婦人公論を創刊しました。(以下、新聞評)

創刊号を読んでみると、読み物本位の編集で、現在の婦人雑誌とは全く違っている。
ただ、創刊一号のためまだなんとなく寂しいところがある。

編集者がもっと目を利かせば、もっと良い題材がいくつも転がっていると思う。

創作が本文の割に多すぎるのでは。中央公論が創作で売れているので、これも創作で売ろうというのはどうか、柳の下にいつもどじょうがいるとは限らない。

横井時敬が軍隊と農業を語る (東京農業大学初代学長)


横井時敬

日本の徴兵制度は結構であり、もっと広くやっても良いと思われるぐらいで、病人以外は兵役に服しめる、という議論にも道理がある。

だが一方から見ると、この兵役ほど農村にとって困ったものはない。最も働きがある人間を、たとえ二年でも引き抜かれるということは、農家にとって大打撃である。

その代わりに奉公人を置くとしても、第一お金がかかるし、自分の家の者ほど優等でないから、大変な損である。おまけに入営しているものには、多少の小遣いさえ送らなければならない。

これはしかし、さほど大きい問題ではない。二年間都会の兵営に入営して、その間に都会趣味に染まり、田舎に帰るのが嫌になるものが多い。これが由々しき問題である。

田舎者が師団に入隊する、師団は多く都会にある、それでいろいろと都会の悪風に染まり、ビールを飲む、タバコを吸う、女におぼれるなどを教わるという按配で、農村の奢侈の風はこのような軍隊帰りの連中から宣伝されることになっているのである。

しかも在営中の厳粛な訓練は跡形もなくなって、悪い遊びだけが病みつきになっているので、困ったものだ。いかにしてこの弊害を除くべきか、これが重大問題である。

これには在郷軍人の練習を怠らず、今までよりもなおさら在郷軍人の訓練を立派にやるようにしなければならないということで、陸軍側でも在郷軍人会を作った次第だ。

その意図は誠に結構で賛成するが、よほど実情に当てはまるようにしないと、いたずらに寄付とか会費とかいうのに金ばかりいって、仕方がないものになるんだもの。
なんとか、この在郷軍人会も、農村の健全なる発達をはかるとともに、在郷軍人の精神を発揮するようにしたいものである。

一方で在営中の軍人にも、故郷を忘れず、農業に対する興味を失わせず、都会の悪風に染まらない方法をとりながら、農業に関するいろいろな知識をさずけてやるような道を講じなければならない。

私はこの意志から軍隊農事講習というものを、東京農業大学において数年前から始めている。大いに骨を折っている甲斐が、多少はあるようである。

この講習では農業の知識を授けるだけでなく、農村青年の貴重なる天職を説いて聞かせて、人から軽蔑される土百姓が国家にとっていかに重大かを訓話するのである。

そして最後に、講習証書というものを与える。これは小さなことであるが非常に良いことであって、毎週の休日を浅草などの悪いところに行かず、農事講習を聞いたという、誠に誇るべき記念になるのだから、証書はぜひ与えるようにしている。

この証書を与えておけば、証書の手前申し訳ないということで、帰郷してから率先して農業に励み、農業の改良に尽くすようになる望みも多くなるのである。

海外

中国の雲南省独立問題


岑 春煊

北京政府の外交部が日本の公使館に対して、日本の言論界を取り締まるよう懇願してきています。

揚子江は減水しており、兵士を輸送する船の航行が困難で、雲南討伐軍の到着は遅れそうです。

四川省の防御軍の一部隊が、雲南独立軍に寝返ったという報道があります。

日本の革命党員によると、岑 春煊(がくしゅんけん)氏が資金面で雲南独立軍を支援しているようです。岑氏自身も雲南に入るよう香港に旅立っており、氏が入ると雲南独立軍はますます強固になると予想されます。

(*岑 春煊は、清末からの袁世凱の政敵。海外に亡命していた)

このとき

出来事

・メキシコのパンチョ・ビリャ軍が、アメリカの鉱山技師を射殺。アメリカ政府のカランサ政権承認に抗議の意図があります。

・中央気象台が全国の測候所で24時間観測を開始

・ロシアがトルコの都市エルズルム(地図)への攻勢を開始


エルズルム

編集後記

婦人公論は、めでたく創刊100周年ということですね。

「女の読書欲、智識欲は、日に日に進歩向上して、従来の婦人雑誌の平凡な記事や口絵や写真には飽き果てた」

と、創刊の目的が明確に広告に書かれています。1月1日の与謝野晶子さんの「女子にも教育が必要」という考え方と、この頃のちょうど時代の流れだったんでしょうね。

”従来の婦人雑誌”は、現在の女性週刊誌と内容が近そうです。

「大正新女大学」というのを、三宅博士(おそらく三宅雪嶺)が書いているということで、これも興味深いです。

「女大学」とは、江戸時代に流行った儒教の考え方に基づいた女性教育書で、かなり男性本位な内容なので、明治に入ってからは福沢諭吉が「新女大学」という本を作ったりしています。

「平成女大学」というのを作ってみたら面白いんじゃないかと思いました。(どんな内容であろうと、炎上間違いなしでしょうケド)

「妖怪変化夜話:井上円了」というのも、個人的には気になります。

ちなみに100年後の表紙は宮沢りえさんでした。(出典:婦人公論.jp


婦人公論2016年1月号

こうして現代の雑誌を並べてみると、100年間の違いは大きいな、とあらためて思います。(当たり前ですけど)

関係ないですが、宮沢りえさんとは同年代なので、私は応援しております。


ロシア大公は、盆栽と醤油(と、そうめん)をどうしたんだろう?とちょっと気になります。
これも全くの余談ですが、小豆島でオリーブを作り始めたのは明治41年ということで、この頃はまだ10年も経ってない頃。大公にお召しになっていただくほどの特産品ではなかったでしょう。

横井時敬氏の話も、本当に率直に述べられていて面白いです。軍隊が身近にあった時代というのを感じます。


ではでは、本日は以上です。


索引語:ロシア 海軍 大隈重信 山県有朋 文化 本・雑誌 農業 中国

Posted by 主筆 at 2016/01/10/01:31

follow us in feedly
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事へ 次の記事へ