百年前新聞

2018-01-22

百年前新聞とは?

ロシア大公が東京着、雄飛号の飛行計画ほか

大正5年1月12日

読売新聞

大正5年(1916年)1月12日の出来事

【外交】ゲオルギー・ミハイロヴィチ大公が東京着
【陸軍】飛行船雄飛号の飛行計画が発表
【朝鮮】朝鮮総督府の教員心得に関して
【政治】大隈重信のこぼれ話
【速報】大隈重信が襲撃される

国内

ロシア大公が東京に到着

大正天皇の即位を祝うロシアの特使、ゲオルギー・ミハイロヴィチ大公が東京に到着しました。

東京駅前では、ロシア国旗をかたどった、黄色、赤、藍、白の四色で装飾された歓迎塔が作られ、東京ゴロドの文字が記されています。

近衛師団、第一師団が沿道に整列し、中学生小学生が両国の国旗を持って大公の到着を待ち構えました。

大正天皇も、伏見宮、閑院宮、久邇宮の三宮を従え、プラットホームまで御出迎えをされています。
大隈首相、加藤海相、岡陸相、石井外相、奥田私娼、井上府知事、近衛、第一師団長らも、大礼服で御出迎えにあがりました。

ミハイロヴィチ大公を乗せた列車は、9時35分に東京駅に到着。

大公は、寺内正毅朝鮮総督、タキシエフ陸軍少将、カホスキー大佐、ハーフ中佐、極東局長ゴサコフ氏などを従え陛下の御前に進み、恭しく挨拶をされ、固い握手を交わされました。

大公殿下は添田鉄道院総裁の先導で、プラットフォームを出て、宿泊所となっている霞ヶ関離宮に向かわれました。

霞ヶ関離宮へ山県有朋元帥が訪問し、寺内総督も交えて会談をしています。

寺内総督は午後、外務省に石井菊次郎外相を訪問し、ロシアからの依頼内容を伝えています。

大公は午後5時30分に宮中に向かい、君が代とロシア国家の奏楽の中、天皇陛下と御対顔され、ロシア皇帝からの

天皇陛下にサンタンドレー大勲章
皇后陛下に聖エカテリーナ勲章

を手渡されました。

大正天皇からも、大公に対して勲章を授けられています。

午後6時頃、飛行船雄飛号が東京上空を飛行し、寺内正毅総督が大公の歓迎のために飛ばしたと説明しています。

6時30分からは宮中で夜宴が開かれました。

飛行船雄飛号の飛行計画発表


雄飛号

飛行船雄飛(ゆうひ)号の長距離飛行計画が発表されました。

1月15日の午後11時から、所沢から大阪間の480キロを往復する大飛行です。飛行船の速度は、36km/hを予定しています。

往路は、所沢から豊橋までと、豊橋から大阪までの2区間に分けて、帰路は大阪から所沢まで一直線に戻る計画です。

船長の益田少佐は、「今回の飛行の目的は、長距離飛行に堪え得るかの試験と、夜間飛行における操縦経験を得るためである」と語っています。

朝鮮総督府の教員心得に関して(新聞評)

従来、朝鮮での教育には外国人教師も多く、なかなか統一した教育が行われていなかった。

そこで今回、総督府が、各地の私立学校に内地同様の制限を加え、厳密な国民教育の実施を目指した「教員心得」を訓令として公布したのである。

その方針としては、

・忠孝を本とし、徳性を涵養すべし
・実用を旨とし、知識技能を教授すべし
・強健なる身体を育成すべし

の三か条であり、

実現の方法としては、

・生徒の性質、境遇に順応する
・時勢と民度に適合する
・訓育に留意し、国民的性格の養成につとめる
・統一ある教授法を行う
・興味による自習の習慣を作る
・適当な体育を奨励す
・親愛と威厳をもって生徒に臨む
・教師自ら修養につとめる
・同僚で親和し、郷党を強化する

とある。

これはほとんど内地の教育方針と同一であり、朝鮮独自の教育ではない。

一面から考えると、朝鮮を内地同様に扱うということで差別がないということであり、一面から考えると、独自性が無いということである。

大隈重信に関するこぼれ話


大隈重信

上野で3月から海事博覧会が行なわれる予定で、先日博覧会の幹部が大隈首相を訪問しました。

大隈首相からは、「そら結構な計画じゃ」と、小一時間も海事思想の普及に関する話を聞かされました。

「補助は5万円もあれば十分だろう」と大隈首相に言われ、喜んでその足で海軍省に行くと、「せっかくだから500円ぐらいは寄付を集めてやろう」とのこと。

大蔵省では、「そんな遊ぶ金があるぐらいなら、わざわざ財政整理をするまでもない。びた一文だって出せるものか」と取り付くしまもない対応で、博覧会の幹部たちは「大隈首相もあんまりだ」とグチをこぼしています。

桜島爆発2周年

桜島の大噴火から2周年となり、鹿児島県では各地で記念会が開かれています。
県庁では昼食時に漬け物をしゃぶりながら、当時のことを追憶しました。

(*1914年の噴火で、桜島は陸続きとなった)

このとき

出来事


大阪朝日新聞

・ロシア大公歓迎の夜宴の帰りに、大隈重信首相が爆弾を投げつけられています。(報道は翌日)

・イギリスで、徴兵制に対して反対して内閣を辞職したサイモン内務大臣(労働党)に代わり、ハーバート・サミュエル氏(自由党)が内務大臣に就任しています。

・栃木県で、御大典記念犬伏町図書館が設立。(現栃木県佐野市)

・伊勢鉄道が白子〜千代崎間を延伸。(現在の近鉄名古屋線)


誕生日


ヘルマン・ゲーリング (23) ドイツ陸軍航空将校、負傷療養中
ピーター・ウィレム・ボータ (0)南アフリカに、ボーア人として生まれる
岡 晴夫 (0) 木更津で生まれる (参考:あこがれのハワイ航路

編集後記

ロシア大公がいよいよ来京し、読売新聞もロシア国歌、ロシア語での歓迎記事を書いて、ロシア大公を迎えています。

寺内正毅朝鮮総督も、石井外相を訪問してロシアからの依頼を告げていて、水面下での外交も始まっています。

陸軍(特にトップの山県有朋元帥)は、ロシアの脅威を防ぐために、ロシアとの同盟に賛成で、ロシアの兵器需要に対しては充分に応えるよう求め、内閣としてはそこまでの深入りは避けるという、方針の違いが根底にあります。

元老山県有朋と、首相大隈重信の両老雄の争い、と見ることも出来ますね。

大隈重信は「大風呂敷」と言われ、話が面白かったので国民の人気は高かったのですが、口が軽い・・・という一つのエピソードがあったので、これも記録として書いておきました。
海事博覧会の幹部が言われた”5万円”は、現在の価値だと2億円ぐらいですが、この幹部もさすがにがっくりしたでしょう。

その大隈重信も、ロシア大公の宴会の帰りに、自動車に爆弾を投げられています。深夜のことで報道は翌日ですが、12日の出来事として速報を書いておきます。


飛行船雄飛号は、1912年にドイツから故障した飛行船を買い取って、そこから改造した初の「国産」飛行船です。
第一次世界大戦でもツェッペリン型飛行船がロンドン空襲を行なっていたり、飛行船の研究も行なわれていました。

朝鮮総督府の教員心得は、全く普通の内容ですが、この新聞評のように独自性が無いと言えば無いです。この辺りは詳しいことまで分からないので、ともあれこういう内容だったということを記しておきます。

誕生日欄では、ナチスドイツで重きをなすヘルマン・ゲーリングが23歳の誕生日でした。第二次世界大戦で重要な役割を演じる人々も、いろいろな形で第一次世界大戦に関わっています。

最後、「あこがれのハワイ航路」は、久々に耳にしましたが、なかなか味があって良いですね〜 船での旅路というのも、飛行機とは違う旅情があります。


ではでは、本日は以上です。


索引語:ロシア 事件 寺内正毅 大隈重信 山県有朋 政治 教育 朝鮮 航空 皇室 陸軍

Posted by 主筆 at 2016/01/11/22:44

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