百年前新聞

2018-04-23

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)2月8日から14日

大正5年2月9日

1916年(大正5年)2月8日

貴族院が予算案を可決

予算不通過で政変が予想された貴族院では、海軍補充、鉄道経営に関する付帯決議を付けることで、なんとか政府提出の予算案が通過しました。

大隈内閣の倒壊はなんとか免れています。

ロシア大蔵証券引き受けに対する銀行家の談

7日に成立した、ロシア大蔵省券5000万円を日本で引き受ける契約に関し、某銀行家が語っています。

某銀行家の談

先年、中国に2700万円貸し付けたことがあったが、5000万円という多額の金を外国に貸し付けるのは、今回が初めてだ。これで日本も財力の上からも認められたわけで、誠に結構なことである。

戦争前には為替相場が、1円が0.95ルーブルぐらいだったのが、今では1ルーブルが58銭ぐらいに下落して、この先も底が知れないぐらいである。

日本に注文した軍需品の代価も払われないぐらいだから、日本でも今後の注文品を送れないような始末で、この募債は当然のこととして現れたのだ。

日本にとっても、貸した金を日本で使わせるのだから、国内の正貨にも影響がない。

この日本の小成金を、なんとかして続かせていきたいものだ。

(注:5000万円は、現在の価値で1500億円ぐらい)

その他の出来事

アメリカの発明家 チャールズ・ケタリングが、電気式セルモーターの特許を取得しています。(後にキャデラックに採用され、一般的に普及します)

1916年(大正5年)2月9日

陸軍の飛行機作成計画

陸軍では、所沢の飛行場で5台の飛行機を建造中です。大正5年度は、発動機を開発し、30台の新型飛行機を建造する計画があります。

これまで日本で100馬力の発動機の開発には成功していますが、英米仏から150馬力の発動機を取り寄せ、これをもとに200馬力の発動機の開発を計画しています。

物価高騰に対する鈴木文治の談


鈴木文治(ウィキペディアより)

第一に、社会政策に基づき、資本家で不正な利益を得るものに対して、法律上厳重な取り締まり法を制定することである。

例えば、今回の戦争を利用して、生活必需品の買い占めを行なった場合、また在庫があるのにないといって値段をつり上げるなどには、多額の罰金刑にするようにしたいものだ。

第二には、消費組合の普及をはかることで、消費組合を通じて物品を安く求められるようにするのである。

第三は、下級官吏、会社員、労働者が団結して、信用組合を作ることである。この方法で、高利貸しや質屋の世話にならず、無利子で金の融通ができるようになる。

第四は、被雇用者の同盟会を組織することで、使用主と利益の分配、労働時間の短縮をはかるなどが出来るようになる。

第五は、官営小口保険である。今回の簡易保険も悪くはないが、この方法はさほど中流以下には有り難がれない。外国の労働保険のように、政府、資本家、労働者の三方から掛け金を出して、労働者のみがもらえるようにしなければいけない。

加藤弘之博士 死去


加藤弘之(ウィキペディアより)

初代東大総長の加藤弘之男爵が、午前6時30分亡くなりました。享年79歳。

家族の談

学者の臨終として、立派なものでした。臨終の時は、夫人、三男五女が枕辺を取り巻いていましたが、子供がことごとく集まったことを非常に喜んでいました。

1月中から、私は2月中に必ず死ぬと予言していましたので、いずれも覚悟しておりましたから、すべて遺言通りにことを運んでおります。

葬儀というものはせず、青山斎場で告別式をやります。もちろん、神官も僧侶も頼まず、ただ親族、知己の人々が集まって告別するだけのことです。
葬列はもとより、花などもいっさい受けず、通知も出さず、新聞に死亡広告を出すだけで、これらはすべて遺言によります。

その他の出来事

【国際】イギリスが日本に、インド洋、シンガポールへの軍艦派遣を要請

【第一次世界大戦】
イギリスの戦闘機ソッピーズ・スカウト(愛称パップ)が初飛行しています。軽量で、これまでの空中戦でのドイツ優位をくつがえす性能となりました。

【訃報】右近権左衛門(10代目) 福井県の北前船主の家に生まれ、日本海上保険を設立されました。


ソッピース・パップ


1916年(大正5年)2月10日


出来事


リンドリー・ガリソン

【アメリカ】
陸軍長官リンドリー・ミラー・ガリソン(51)が辞任しました。
ガリソン氏は、メキシコ革命への介入のため大幅な軍拡予算を立案(メキシコに14万人駐在)しましたが、議会の承認を得られませんでした。
ウィルソン大統領との認識の相違もあり辞任に至っています。

【第一次世界大戦】
北海沖のドッガーバンクで、イギリスとドイツの海戦。
イギリス船4隻(うち3隻は掃海艇、1隻は潜水艦)、ドイツ潜水艦25隻と戦力に大きな差があり、イギリス掃海艇3隻は逃走に成功。潜水艦1隻が撃沈し、戦死56名、捕虜24名。

1916年(大正5年)2月11日

出来事

【第一次世界大戦】
ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世が、来月1日より敵性武装商船を戦艦とみなし、無警告で撃沈する命令。

【第一次世界大戦】
イギリスの軽巡洋艦アリシューザが、ドイツ敷設の機雷に触れて撃沈。昨日のドッガーバンク海戦からの帰途で、10名が死亡。

【アメリカ】
フェミニストであり、アナキストでもあるエマ・ゴールドマン(46)が産児制限運動により投獄される。

【地方】
大阪で初の精神薄弱児童施設ができる(岩崎佐一:桃花塾


【訃報】
柚木慶二 鹿児島県選出衆議院議員(政友会)
西南戦争に従軍し、後に自由民権運動に関わる。

1916年(大正5年)2月12日

衆議院で八幡製鉄所拡張案が可決


河野広中

衆議院は午後1時17分開会、昨日亡くなった柚木慶二氏の弔辞を述べ、日程に入りました。

第四議案として、八幡製鉄所の拡張案が提出され、

吉植庄一郎議員(政友会)は、「80万トンの不足がある中、わずか30万トンの増加計画では不満、財源を国債に求めるべし」と意見を述べ、不本意ながら賛成と述べてます。

鈴木梅四郎議員(国民党)は、「半官半民組織にするべき。民間であればいち早く増資をし、需要に応じることができるのに、官営では議会の承認が必要となり、スピード不足。欧米でも製鉄所は民間である。」と意見を述べ、無条件ではないが賛成としています。

河野広中農商務大臣は、「鉄鉱石の供給に上限があり、これ以上の拡張は困難。政府は無方針ではなく、今後は民業を奨励する」と答弁しました。

採決の結果、与野党満場一致で可決しています。

関連記事: 1月14日 陸軍の製鉄所感

その他の出来事

【議会】 貴族院が海軍航空隊設置費62万8660円を可決。海軍に航空隊3隊が新設されることになりました。

【外交】 伊集院彦吉がイタリア公使に任命される。

【産業】 徳島県で阿波製紙が創業

【地方】 愛知県で西尾鉄道が吉良吉田〜吉田港駅を延伸。(現在の名鉄西尾線)

【第一次世界大戦】 ドイツ軍がヴェルダン近郊のマース川東岸に集結、フランス軍が気付く。

訃報: リヒャルト・デーデキント (ドイツの数学者)

1831年生まれ、享年84歳。

代数、数論を研究し、現代の代数的整数論を構築した数学者の1人。


デーデキント生誕150年記念 東ドイツ切手

1916年(大正5年)2月13日

出来事


ハンマースホイ自画像

【第一次世界大戦】 ロシアがオスマントルコのエルズルム(地図)に対して攻勢。ロシアの指揮官は、ニコライ・ユデーニチ大将。

【アメリカ】ワシントンポストに、空中巡洋艦構想の記事掲載。(参考サイト:蛇乃目伍長さんのページ

【訃報】 ヴィルヘルム・ハンマースホイ(デンマークの画家)
1864年コペンハーゲン生まれ、享年51歳。
室内風景画を主に描き、同時代のデンマークを代表する画家です。


1916年(大正5年)2月14日

東京市参事会が電車賃値上げ案を承認


奥田義人

奥田義人市長の提案による東京市の電車値上げ案が、市参事会の調査委員会で賛成8名、反対2名により承認されました。

東京市の電車事業はかねてより赤字経営で、市の財政上の問題となっており、昨年6月に就任した奥田市長が値上げを強く主張していました。

市民の中には、電車事業の赤字は放漫経営によるものとして、反発の声も根強くあります。

臨時閣議で日露同盟締結の方向

1月のロシア大公の来日によってもたらされた日露同盟の締結案に対して、臨時閣議が開かれました。

ロシアに東清鉄道の一部譲渡を交換条件として、日露同盟を締結する方向性が決まっています。

訃報: 松原新之助 (水産学者)


東京海洋大学の銅像

嘉永6年(1853)松江生まれ、享年63歳。

東京医学校(東大医学部の前身)に入学し、ドイツ人教師ヒルゲンドルフに生物学を学びました。
後にドイツに留学し、帰国後水産講習所の創設に尽力し、初代の所長になられています。

(水産講習所は、東京海洋大学の前身の一つ)


この週に誕生日を迎えた人たち


トーマス・エジソン(69) 発明家
秋山 好古(57) 陸軍中将
夏目 漱石(49) 作家
岡田 啓介(48) 海軍省人事局長(少将)
内田 良平(42) 黒竜会主幹
広田 弘毅(38) 外務官僚
李 烈鈞 (34) 中国第三革命従軍中
平塚 らいてう (30) 育児中
中野 正剛(30) 朝日新聞記者
清沢 冽 (26) アメリカ滞在中
河合 英治郎(25) 農商務省官僚

編集後記

今週も、そんなに大きな出来事は起こっていません。

ロシアに5000万円貸し付けという記事は、日本が中国以外の外国に貸し付けをするのはj初めてということで、第一次世界大戦を機に日本の国際的地位が上がっていることが、良く分かりますね。


貴族院で追加予算が可決され、第二次大隈内閣の崩壊は免れています。先週の記事にあった、山県有朋の工作が功を奏したというところもあると思います。

おそらく、山県の交換条件だったのでは?と思いますが、臨時閣議で日露同盟の方向性が決定されています。

日露同盟論者の山県有朋が、大隈重信を動かしたんでしょうね。山県有朋と大隈重信の力関係が分かる出来事です。


物価の高騰に言及している鈴木文治氏は、日本の社会主義の草分けの人物です。写真を見ると、かなり恰幅の良い方ですね。


その他、第一次世界大戦ではイギリスが新型機を初飛行させています。この頃の航空機は日進月歩で、ドイツとイギリス・フランスの間で開発競争が行なわれています。

日本でも、陸軍、海軍ともに、航空隊の充実が行なわれた週です。


2月12日に少ししか書いていませんが、ドイツ軍がヴェルダン付近に進出しています。

1916年は、第一次世界大戦で膠着した西部戦線でヴェルダン(ドイツ軍の大攻勢)、ソンム(主にイギリスの大攻勢)の二大会戦が行なわれた年です。

いよいよヴェルダンの大会戦が始まろうとしています。


では、今週は以上です!


索引語:アフリカ アメリカ イギリス トルコ ドイツ ロシア 地方 学問 政治 満州 産業 第一次世界大戦 経済 美術 航空 訃報 議会 鉄道

Posted by 主筆 at 2016/02/15/14:17

follow us in feedly
このエントリーをはてなブックマークに追加

前の記事へ 次の記事へ