百年前新聞

2018-01-22

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)3月7日~13日の出来事

大正5年3月8日

ヴェルダン戦

1916年(大正5年)3月7日

「白樺」が発売禁止 セントセバスチャンの口絵で


「白樺」3月号が、マンテーニャ画のセントセバスチャンの口絵があまりに残酷、という理由で発売禁止になりました。

湯浅倉平警保局長の談

元来、発売禁止にするのは風俗壊乱、残酷、破廉恥、犯罪の経路を描写したものである。

近頃、社会風教が堕落したのか、それとも文学者が堕落したのか、そこは疑問であるが、小説にしても普通の題材では読者の興味をひくことが薄いために、極端なものを競って題材にする傾向がある。

これは社会風教上、大いに取締らなければならないが、我々は宗教家のように積極的な指導ができないので、ただ消極的にこのようなものを取締っているのである。

この口絵も有名な絵ではあるが、一見して誠に悪寒をもよおすのみならず、このような残酷な絵をみて読者が殺戮を平凡な事件のように感じさせるおそれがある。

しかしながら当局も文士の努力と多額の費用を無駄にしないよう、「もし口絵を取るなら発売しても良い」と一度は注意をしたのである。今後も敢えてこのようなものを載せるのであれば、当局は厳重に処分する考えである。

その他の出来事

【外交】
閣議で、袁世凱排撃・民間有志の排袁運動援助(南方援助)を黙認する方針を決定。
中国では内乱が生じており、大陸浪人や陸軍参謀本部は、反袁世凱活動を裏で支援しています。

【産業】
大蔵大臣の監督権を強化する、銀行条例改正法が公布

【産業】
理化学研究に対して国庫補助をする法律が公布
(理化学研究所の設立につながります)

【ドイツ】
航空機エンジンメーカー「バイエリッシェ・フルークツォイク・ヴェルケ株式会社(BFW AG、バイエルン航空機製造)」が設立
(第一次世界大戦後、BFW → BMW となります)

訃報: 吉丸 一昌 (作詞家)

1873年(明治6年)現大分県臼杵市生まれ、享年42歳。

東京帝国大学に進み、東京府立三中の教師を経て、東京音楽学校の国語と作歌の教授になられました。
1911年からは文部省の尋常小学校唱歌編纂委員会の作詞委員長を務められ、「文部省唱歌」となっているもののうち、「桃太郎」「かたつむり」は吉丸氏の作詞とされています。

他に代表曲として「早春賦」があり、日本の童謡成立に大きな影響を与えました。

1916年(大正5年)3月8日

出来事

【第一次世界大戦】
メソポタミア戦線のクートの戦いで、イギリス増援軍がオスマン帝国軍に敗退

【訃報】山田 省三郎 (岐阜県の政治家)
天保13年(1842)岐阜の名主の家に生まれる。享年75歳。

藩の堤防取締役に任じられ、明治になっても県会議員として24年間、「輪中」と呼ばれる地域の治水に尽力されました。
衆議院議員も3期務められ、木曽三川の分流に大きく貢献された方です。

参考サイト: 木曽川下流河川事務所

1916年(大正5年)3月9日

出来事


ニュートン・ベイカー

【第一次世界大戦】

・中立国ポルトガルが、ドイツに宣戦布告し、ドイツもポルトガルに宣戦布告しました。アフリカ植民地に、ドイツ軍が侵入したためです。

・第5次イゾンツォの戦い始まる。(イタリア 対 オーストリア) フランスの依頼により、オーストリアの注意を南に向けることが目的です。

・イギリスでアスキス内閣が、カイロ情報局のアラブ反乱支援計画を承認。オスマン帝国に対するアラブの反乱を、イギリスが支援することが確定しています。フサイン=マクマホン協定により、イギリスがアラブを支援することになっていましたが、インド省がイスラム教徒を刺激するとして反対していました。

【アメリカ】

・陸軍長官にニュートン・ベイカーが就任。先日(2月10日)辞任した、軍拡派のガリソン氏の後任として。ベイカー氏は、第一次世界大戦への中立維持派、参戦派のどちらにも顔がたつ人物です。

・内乱状態にあるメキシコのパンチョ・ビリャ軍1500名が、国境を越えニューメキシコ州コロンバスに侵入。アメリカがカランサ政権を承認したへの抗議ですが、アメリカ市民17名が殺害され、アメリカ世論がメキシコ介入に向けて動く逆効果になっています。

1916年(大正5年)3月10日

出来事

【鉄道】天理軽便鉄道で安堵駅が開業

【第一次世界大戦】

・「フランス音楽擁護のための国民同盟」が設立される。名誉会長の一人にサン=サーンス。敵国であるドイツ・オーストリアの作曲家の作品をフランスで演奏することを禁止しようと提案しています。
参考サイト: 江川純一さんのブログ

・メソポタミア戦線のクートの戦いで、オスマン帝国軍がイギリス軍に降伏の文書を送るが、イギリス軍が拒否

【訃報】ウォルター・S・サットン (アメリカの生物学者、医師)

染色体の研究を行ない、1902年に遺伝子が染色体上に存在するという染色体説を唱えました。1920年頃に染色体説は証明されています。大学院卒業後は医師として働かれ、37歳の生涯を終えています。

1916年(大正5年)3月11日


帝国劇場(右) 左は東京会館

見合い場所の一番人気は帝国劇場

花の季節が近づいた今日この頃、あちらこちらでお見合いの光景をみかけます。

東京で最もお見合いに使われているのは帝劇で、日を合わせて近くの椅子を買っておく方が多いようです。こうすれば、幕の間にチラチラと見ますので、お互いにきまりの悪い思いをしなくてすみます。

大安の日などの吉日には帝劇で7~8組、三越や白木屋でも5組をくだらないお見合いが見られるとのことです。

また、秋の文展(文部省展覧会)でもお見合いがよく行われていて、絵を見ながらその合間にお互いを見るし、目を絵にそむけたりできるので、大変お見合いに都合が良いようです。

その他の出来事

【北海道】
北海道拓殖銀行法の改正公布。手形割引に対する担保上の制限が撤廃され、信託業務が追加となっています。

【アメリカ】
戦艦ネバダが就役。弾薬庫や機関室などの重要部分の装甲を厚くし、それほど重要でない部分の装甲はほとんど無いという、これまでにない発想で作られた画期的な船です。

【誕生】
ハロルド・ウィルソン(後年、イギリス首相)

1916年(大正5年)3月12日

出来事

【産業】
新潟製氷株式会社が設立。(株式会社セイヒョー

【インフラ】
東京の神田川に架かる和泉橋が鋼製となる。(地下鉄岩本町駅からすぐ)

【訃報】

筧雄平(鳥取県の公共事業家)享年73歳。
郷土の原野を開拓され、また農家のために日本で初となる託児所を開設されました。

マリー・エブナー・エッシェンバッハ (オーストリアの女性作家、享年85歳)

1916年(大正5年)3月13日

出来事

【鉄道】
石川県の松金鉄道が電化。松任市~金沢間。

【訃報】 大戸平 廣吉 (力士、親方)

慶應2年(1866)宮城県生まれ、享年49歳。
才能に恵まれ、入幕1年で大関になるも、酒により健康を害して休場がちとなり、横綱へは昇進できませんでした、

引退後は、3代目尾車を襲名し、後進の育成をはかるとともに、雷と協力し相撲界を牽引。両国の回向院で開かれていた相撲を、雨天でも行えるよう常設の建物を建てることに尽力し、「両国国技館」と名付け、相撲の国技化に貢献されました。

【訃報】 平井 金三郎 (学者、教育者)

安政6年(1859)京都生まれ、享年56歳。

外務省勤務後、一時僧になり、万国宗教大会で英語でスピーチをされました。その後、東京外国語大学、一高の教授となり、日印協会、ローマ字ひろめ会の創立にも関わられています。

この週に誕生日を迎えた人々

大隈 重信 総理大臣 78
高村 光雲 彫刻家 64
金子 堅太郎 枢密顧問官、維新資料編纂室室長 63
モーリス・ラヴェル 第一次世界大戦従軍中 41
ヴィルヘルム・フリック ドイツ警察官 39
ムスタファ・ケマル・アタテュルク オスマントルコ軍大佐 35
高村 光太郎 彫刻家 33
小宮 豊隆 文学者 32

編集後記

日本国内では、大きな出来事はありません。

「白樺」の発禁処分は、どうでしょう。なかなかセンセーショナルな絵であることは間違いありませんが、難しい問題ですね。

発禁処分をした湯浅倉平警保局長は、20年後に宮内大臣として 2・26事件に関わることになります。昭和天皇の意を受けて、反乱将校の鎮圧に力のあった人物です。

白樺派に関しては、こちら(我孫子市白樺文学館)をご覧ください。私は千葉県(船橋)に住んでいたことがあるので、その頃に行っておけば良かったなぁ、と思っています。

その他、理化学研究所が設立されようとしていますね。最近では、小保方さん騒動で有名になった理研ですが、戦前は科学研究により一大財閥にもなります。


第一次世界大戦では、イギリスのアラブ反乱支援が確定しています。アラビアのロレンスのドラマが、いよいよ始まろうとしています。

アメリカ陸軍長官の交替も、当時のアメリカの第一次世界大戦に対する態度のブレが分かって面白いです。


今週もいろいろな方が亡くなっています。

もう少ししてから、大正時代の中後記から、北原白秋、三木露風、西条八十などによる童謡ブームが始まります。吉丸一昌さんは、その先駆者ということで、実は大きな功績があった方なんじゃないかと思いました。

大戸平廣吉さんも、元々は「大角力常設館」となるところを、「両国国技館」と命名して、その命名によって相撲が”国技”になったということです。言ったもん勝ち(?)という感はありますが、相撲界にとっては大きな貢献をされたということですね。


では、今週は以上です。


索引語:アメリカ イギリス イタリア ドイツ ポーランド 中東 地方 政治 文化 産業 生活 社会 第一次世界大戦 訃報 誕生 鉄道

Posted by 主筆 at 2016/03/14/15:09

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