百年前新聞

2018-01-22

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)3月14日~20日の出来事

大正5年3月15日

1916年(大正5年)3月14日

東京の電車値上げ問題

値上げ反対の市民大会

午後2時より、日比谷公園で電車値上げ反対の市民大会が開かれました。雪まじりの雨が降る寒い日でしたが、反対派の市会議員も出席し、大いに威勢を上げました。

これから始まる市議会に、反対派議員に白ばらの勲章をつけさせて、議会に送り出しました。

(東京市の電車事業は、放漫経営による赤字が続いており、昨年就任した奥田義人市長は値上げを公約していますが、市民の間には根強い反対がありました)
関連記事: 2月14日 東京市参事会

東京市会で電車値上げ案可決

続いて午後4時半から行われた東京市会では、49対19の差で、電車の値上げが可決されました。

ただ反対派の延期工作が功を奏し、終わったのは深夜12時。細則や施行日は、後日の市会に延期になっています。

その他の出来事

【社会】
大阪朝日新聞の写真班が、ナイルス氏の曲芸飛行に同乗し、日本初の空中撮影に成功
関連記事:1915年12月11日 ナイルス氏曲芸飛行初日など

【鉄道】
千葉県で流山軽便鉄道が開業(現在の流山線。流山~馬橋間)

1916年(大正5年)3月15日


広西省(赤部分)

広西省が独立を宣言


陸栄廷

雲南省、貴州省、に続いて、広西省(赤部分)が袁世凱の皇帝就任に反対し、独立を宣言しました。

広西将軍 陸栄廷は、袁世凱からの懐柔もあり革命軍と北京政府軍のどちらにつくか、去就に注目が集まっていましたが、14日の軍事会議で共和制維持が全会一致で賛成し、独立に踏み切りました。

雲南・貴州独立軍 対 北京政府軍の戦いは、膠着状態、やや北京政府軍が優勢に進んでいましたが、広西省が続いたことによって、独立軍の意気が大いに上がっています。

続いて広東将軍 龍光済の去就に注目が集まっています。

関連記事: 雲南省の独立貴州省の独立

その他の出来事


ジョン・パーシング

【社会】
大杉栄が「労働運動の哲学」を出版 (即、発禁)

【アメリカ】
ジョン・パーシング准将の率いるパンチョ・ビリャ軍討伐隊 12,000人が、国境を越えメキシコ領内へ進軍。先日の、パンチョ・ビリャ軍がアメリカ領内に侵入したことに対する報復のため。

メキシコは内戦状態にあり、アメリカはカランザ将軍の政府を承認しています。カランザ将軍、カランザ政府の陸軍大臣オブレゴンともに、アメリカと協力する姿勢を示していますが、兵士の間では反アメリカ感情も強く、数千の兵がカランザ将軍のもとを離れた、という報道もあります。
(関連記事: 3月9日 パンチョ・ビリャ軍のアメリカ侵入

【ドイツ】
ティルピッツ海軍大臣が辞任。無制限潜水艦作戦(潜水艦により、敵国の通商を破壊する)が認められず、政府と意見の相違があったため。

【ロシア】
ポリワノフ軍事大臣が解任され、ドミトリー・シュワエフが軍事大臣に就任。軍の補給が重要となっており、シュワエフ氏の主計官としての実績が認められたため。

【第一次世界大戦】
オーストリアがポルトガルに宣戦布告。

【訃報】 山田宗美 (鍛金家)
明治4年(1871)生まれ、享年44歳。1枚の鉄板から、花瓶や置物などを作る独自の技術を考案されました。帝室技芸員に内定していましたが、若くして亡くなっています。

1916年(大正5年)3月16日

出来事


カンディンスキ―

【教育】
私立真言宗連合高野山大学が、私立高野山大学に名称を変更

【第一次世界大戦】
メソポタミア戦線のクートの戦いで、度重なる攻撃失敗による司令官更迭。エイルマー将軍からゴリンジ将軍へ。

【文化】
画家のヴァシリー・カンディンスキー(49)が、ストックホルムを発ちロシアに帰国。愛人の画家ガブリエレ・ミュンター(39)と永遠の別れとなる。

カンディンスキ―はドイツのミュンヘンで活動していましたが、第一次世界大戦でドイツとロシアが敵対関係になったため、ロシアに帰国していました。ミュンターは中立国スウェーデンで共同展覧会を開きましたが、これ以降二人が会うことはありませんでした。(カンディンスキ―は、ロシアで別の女性と結婚します)

訃報: 角田 浩々歌客 (詩人)

明治2年(1869)静岡県生まれ、享年46歳。(本名は角田勤一郎)

慶應義塾に進み、卒業後は「国民之友」などで創作を発表。後に大阪に移り、大阪朝日新聞、大阪毎日新聞で文芸欄を担当されました。(編集長、文芸部長)

新聞社に勤めるかたわら文芸誌を作り、後進に発表の機会を与えています。また、北欧文学の紹介にも務められました。

慶應義塾の旧塾歌も作詞されています。

1916年(大正5年)3月17日


ギヨーム・アポリネール

【経済】硬貨不足のため、回収済みの2銭白銅貨の再使用を日銀が決定
(関連記事:貨幣法改正案の成立

【社会】帝国ホテルの支配人 林愛作が、シカゴで建築家フランク・ロイド・ライトと覚書を交わす。(参考:帝国ホテル物語
関連記事: 林支配人の渡米

【鉄道】国鉄神奈川駅が、貨物の取り扱いを止め旅客駅に戻る

【中国】袁世凱が梁士詒(りょう しい)と帝政取り消しを協議

【第一次世界大戦】詩人でキュビズムの先導者でもあるギヨーム・アポリネール(35)が西部戦線で頭部を負傷

1916年(大正5年)3月18日

海軍航空隊令が公布

海軍航空隊令が公布され、来る4月1日から施行することになりました。

・海軍航空隊は横須賀軍港に置き、必要に応じてその他の地点に置くことが出来る
・海軍航空隊は、その所在地の地名を冠称する
・海軍航空隊は、当該鎮守府または要港部に属する
・司令、飛行機体長、機関長、分隊長、軍医長、主計長、を置き、必要に応じその他特殊の人員を置く

などが、決められています。

アメリカ人飛行士 アート・スミスの来日


アート・スミス

ナイルス氏に続く、2人目の宙返り飛行家 アート・スミスが、地洋丸で横浜に到着しました。一行はスミス氏、自動車選手(自動車レースも行なう)4名、興行師の櫛引弓人氏などです。

スミス氏は、やや身長が低い22歳の青年です。本来なら妻と一緒に来日する予定でしたが、来日直前に離婚訴訟を起こしたとのことで、新聞記者の質問に対し「そのことについての質問は御免蒙りたい」と回答しています。

約1週間後に、曲芸飛行を披露する予定になっています。

その他の出来事

【台湾】
台湾総督府の律令制定権を認めた1906年の法律第31号を、1921年末まで延長する旨が公布される (関連記事:衆議院の六三法継続審議

【学問】
山極勝三郎、市川厚一が、タールを用いて癌の人工発生に成功したことを東京帝国大学医科大学紀要に発表
関連記事: 1915年9月25日

【アメリカ】【技術】
ハロルド・パワーが、3時間の音楽放送を行なう。(*ラジオの実用化が近づいています)

【第一次世界大戦】
ドイツのエルンスト・ウーデット(19)が、昨年6月の入隊、11月の配属以来、初の敵機撃墜を記録。(後のエースパイロット)


【訃報】浦野 太蔵
1841年、能登の医者の家に生まれる。

キリスト教がまだ禁じられていた時代(明治元年)に、日本で初めてロシア正教の洗礼を受けた3人のうちの一人です。後年は岩手県の宮古に移り、曹洞宗に改宗、医者としての人生を送られました。

1916年(大正5年)3月19日

袁世凱に引退勧告


湯化龍

上海の前教育総長 湯化龍 氏が、袁世凱大総統に忠告書を発送しました。

・雲南、貴州で乱が起こり、国内が混乱している
・袁総統も、最近帝政の取り消しを考えていると聞いた
・民意を製造し、帝政を行なおうとしたことで、国民の信義は失われた
・責任をとって引退すれば、遅きに失したとはいうものの、信頼はいくぶん回復されるだろう
・だが、このまま武力をもって内乱を続け、民を苦しめることは、責任はさらに重大になる
・恭しく忠告する、伏してこの意見を採用してくれんことを

(*湯化龍氏は、元々袁世凱の支持者だったが、帝政運動後に袁世凱から離れた)

【トルコ】
ムスタファ・ケマル(34)にパシャの称号が与えられる。ガリポリの戦いでの軍功が認められたため。

【第一次世界大戦】
・ロシアがドイツに対し、ナーロチ湖の戦いを仕掛ける。ドイツ軍8万人に対し、ロシア軍37万人、ドイツ軍が何とかロシア軍の攻勢を退ける。(ナーロチ湖は、現在のベラルーシ北部)

・ロシア軍がペルシャのイスファファンを占領。


訃報: 市川斎入(初代 右団次)


Wikipediaより

天保14年(1843)生まれ、享年72歳。幕末から大正期にかけて、上方で人気を博した歌舞伎役者です。

当時は邪道視されていたケレン(派手な演出)を得意とし、批判を許さないほどの洗練された芸を披露されました。

新しい芝居にも積極的に取り組み、舞台装置としてマグネシウム閃光なども取り入れられています。

晩年は斎入と号し、草庵で茶をたしなまれました。

1916年(大正5年)3月19日

出来事

【社会】
上野公園で海事水産博覧会が開会
開会式を飛行機で訪問した海軍飛行隊の大尉 頓宮基雄(28)が帰路に芝明舟町(現在の虎ノ門付近)の民家に墜落して死亡。
関連記事: 大隈首相へ海事博覧会の陳情

【文化】
宮沢賢治(盛岡高等農林学校学生)が、修学旅行で東京を訪れる。初めての東京訪問で、西ヶ原農事試験場見学・東京高等蚕糸学校を見学。
(参考:賢治初の上京(1):四季歩のつれづれ

【科学】
アインシュタインの一般相対性理論に関する論文が、『物理学年報』誌に受理される。
(関連記事: 1915年11月25日

訃報: オタ・ベンガ (展示品となった人物)


Wikipediaより

1883年頃 ピグミーとしてコンゴに生まれる。(身長 4フィート11インチ 約150cm)享年32歳。

20歳の頃、部族がベルギーの部族統制軍に襲われ、その混乱の中で奴隷商人に捕まりました。アメリカ人の宣教師により購入され、解放されますが、そのアメリカ人について 1904年のセントルイス万国博覧会で、「世界中の人類を展示する」人類学の展示品として展示されます。

愛想が良く人気者となり、歯が儀式のために磨かれていたことから「人食い人種」として見世物となりました。

一旦アフリカに戻りますが生活になじめず、アメリカに戻り、ブロンクス動物園でオランウータンなどと同列に類人猿として展示されます。

観客から不愉快な扱いを受けたことから、だんだんと粗暴になり、宣教師に引き取られました。

その後は教育を受け、タバコ工場で働いて、アフリカに帰る夢を持ち始めます。

第一次世界大戦が勃発し、航路が一般人には使用できない状態となり、アフリカに帰国できないことからうつ状態となり、拳銃自殺をしています。

この週に誕生日を迎えた人々

渋沢 栄一 (76) 実業家
原 敬 (60) 政友会総裁
康 有為 (58) 立憲君主制主義者
徳富 蘇峰 (53) 国民新聞主筆
豊田 佐吉 (49) 発明家
ネヴィル・チェンバレン (47) バーミンガム市長
アレクサンドラ・コロンタイ (44) ロシアで革命運動中
張 作霖 (41) 陸軍中将
アルベルト・アインシュタイン (37) チューリッヒ連邦工科大学教授
ラス・ビハリ・ボース (30) 新宿中村屋で潜伏中

編集後記


カンディンスキ―画 「即興 渓谷」

この週も、日本国内では大きな出来事はありませんね。

中国では、広西省も独立をして、元の支持者からも引退勧告がされて、袁世凱が皇帝就任をあきらめるようになっています。

第一次世界大戦がいろんなことに影響を与えている事例として、カンディンスキーの帰国、オタ・ベンガの自殺は、興味深い出来事です。

カンディンスキ―は、ロシアの画家で、抽象絵画の創始者です。ミュンヘンで活動中に、ドイツ人のガブリエレ・ミュンターと恋仲になり、第一次世界大戦によって離れ離れになります。

カンディンスキ―は、ロシア帰国後に「革命的芸術」としてレーニンに認められ、別の女性と結婚することになります。ドイツに残してきた絵画の返却を求め、ミュンターと争うことにもなります。

ミュンターはうつ状態になってしまいますが、その後新たな伴侶も出来、第二次世界大戦中はカンディンスキーのコレクションを保存し続けるという役割も果しています。


オタ・ベンガ氏は、「人間動物園」を象徴する人物ということです。このようなことがあったとは、私も知りませんでした。

アフリカに帰る希望が、第一次世界大戦によって断たれたということで自殺・・・
本当に、いろいろな人生がありますね。


では、今週は以上です。


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Posted by 主筆 at 2016/03/21/13:54

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