百年前新聞

2017-10-19

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)6月20日~26日

大正5年6月21日

1916年(大正5年)6月20日

浅草象潟署が私娼に廃業勧告

浅草象潟署が、管轄内の私娼に廃業勧告を開始しました。勧告には、佐々木署長自らが当たっています。

私娼はめかしこんで出頭し、一目で怪しい者と思われますが、彼女たちには恥じる様子はありません。

署長は応接室に私娼を呼んで、

「今日、お前らをよんだのは外でもない。お前らもかねて知っているとおり、警視庁では私娼、すなわちお前らを撲滅することにした。
お前らが足を洗うにはこの際が最もよろしい時であるから、どうか正業にかえってもらいたい。
もっとも無理にやめろとは言わぬ。その代わり今までのようにはできない。」

というようなことを、30分間にわたって諭しました。

午前中11人、午後12人に勧告をしています。

佐々木署長の談:

「管内には、営業者が847軒、私娼が2,153人いた。
まずは主人側を召喚し説諭したが、何しろ800人以上なので10日かかった。その結果、22軒の営業者と、180名の私娼が減った。

私娼に対する勧告に、営業者が付き添って立ち会わせてくれという希望があったが、もちろん許さなかった。

何しろ1900人を勧告するのだから、1月はかかる。」

関連記事:6月18日など 私娼問題に関する東京府会と警視庁の対立

友愛会江東支部で、渋沢栄一が講演

深川の猿江小学校で、午後6時より友愛会(労働者団体)の連合会が開かれました。

渋沢栄一男爵も出席し、「自分は労働者の味方として、資本と労働の調和に微力を捧げている。真の商工業は、資本と労働の双方とも得をするはずである」と講演しています。

鈴木文治会長も出席し、労働運動の価値について講演を行ないました。

その他の出来事

【社会】
信玄公掛松が枯れたことに対し、鉄道院が所有者の清水倫茂に損害賠償を拒否する回答。
清水氏は、提訴の準備に入る。
関連記事:4月15日

【中国】
孫文が黎元洪総統へ回答電報
黎元洪から孫文への電報に対し、孫文が回答電報を発しています。

・旧約法を復活させる黎元洪の方針を称えるとともに、まだ何も実行されていないことを注意。
・北京に代表を送り協議する旨には同意。追って人選して連絡すると回答。

【第一次世界大戦】
ロシア陸軍公報で、日本の天皇陛下からの戦勝に対する祝電が報道される(ブルシーロフ攻勢)

1916年(大正5年)6月21日

日本郵船がニューヨーク航路を開始

日本郵船が、横浜からニューヨーク間の貨物輸送を開始しました。

第一便として、これまで欧州航路の貨物船だった「対馬丸」が、横浜を出発しています。
サンフランシスコ、パナマ運河を経由し、8月3日ニューヨーク着予定です。

張作霖が宋社党討伐を表明

満州の張作霖将軍は、各地に潜伏する宋社党(清朝復興運動)を討伐する方針を表明しました。

開原付近で宋社党の募兵があるという情報には、二個中隊を差し向け、撫順方面での馬賊に対しても騎兵二個中隊を差し向けています。

各地方の治安を維持するため、馬賊の頭目に帰順を許していますが、一人の頭目が張作霖に反目し隙を見て逃げ出したようです。

張作霖将軍は中央政界の動きとは距離を置いており、革命党(南方派)と北京政府との形勢を観望している状態で、とにかく満州の現状維持に努める方針と、来客に語ったようです。

その他の出来事

【地方】
小倉裏線(福岡県)が全線廃止。
鹿児島本線の支線で、陸軍が沿岸部には危険があるため、内陸に支線を作ることを条件に鉄道敷設を認めていたもの。

【アメリカ・メキシコ】
国境付近で、アメリカ軍とメキシコ政府軍が衝突
メキシコ軍ゴメス司令官が戦死、アメリカ兵、メキシコ兵ともに約40名が戦死

【ロシア】
軽巡洋艦「アドミラール・ラーザレフ」が進水。
革命のため建造が中断し、完成は1932年。

1916年(大正5年)6月22日

アート・スミスの経過

16日に飛行中に墜落したアメリカ人曲芸飛行家 アート・スミス氏は、札幌病院に入院中です。
経過は順調ですが、歩けるまでには2か月ほどかかりそうです。

ついてきた技手と豆自動車は、22日横浜発の船で帰国の途についています。

スミス氏は入院中に、片足でも飛べるように飛行機を工夫し、必ず飛んでお目にかけると豪語しているようです。

その他の出来事

【文化】
文部省において、法隆寺壁画の保存調査委員会
調査に慎重を期すため、7月に再度委員会が開かれる予定

【皇室】
皇后宮大夫に大森鍾一(前京都府知事)が就任。前任は徳川達孝(田安家当主)

【陸軍】
第6師団(熊本)の司令部が、熊本偕行社へ移転

【社会】
警視庁が帝国ホテルに注意。
排泄物を内堀に垂れ流さないよう、汲み取りをするよう言い渡す。

【文化】
林芙美子が第二尾道尋常小学校5年に転入
参考サイト:日本ペンクラブ電子文藝館

【第一次世界大戦】
ドイツがホスゲンを毒ガスとして使用
塩素ガスはガスマスクが開発されたため、新たな毒ガスを投入した
参考記事:緊急災害医療支援学 ホスゲン

【イギリス】
アスキス首相が、大戦後に大英帝国会議を開くことを表明。
カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アメリカの自治領に加えて、アイルランド代表の参加も表明。
(=アイルランドを自治領とする方針を表明)
インドはまだ対象に入っておらず、インド人の間には反発もあります。

【ギリシャ】
スクルディス首相が辞任し、ザイミス首相が再任
関連記事:1915年11月7日 ザイミス首相就任
*中立国ギリシャでは、連合国側のヴェニゼロス元首相派と、親独派の国王派との間で、流動的な政局が続いている。隣国のセルヴィアが独墺軍に占領され、海上は連合国側の軍隊が駐在している状況。

訃報:田中芳男(博物学者)


Wikipediaより

1838年(天保9年)生まれ、享年77歳。

信濃国飯田に医師の子として生まれ、17歳の時に本草学を学びに名古屋に赴きました。
師が幕府の蕃書調所に出仕することになり、江戸で蕃書調所に出仕します。
1867年にはパリ万国博覧会の代表にもなりました。

帰国後は明治政府に出仕し、大学南校(東京大学の前身)に勤務したり、物産展、博覧会の多くに関わりました。

上野公園の設計にも関わり、博物館、動物園の設置にも尽力されています。(2代目博物館館長)

日本で初めて博物館を作り、動物の分類(「綱」「目」「科」「属」「種」)の訳語を作るなど、明治期の科学に大いに貢献されました。

後年は貴族院議員、大日本山林会会長なども歴任されています。

1916年(大正5年)6月23日

アート・スミス慰問の募金が始まる

先日、札幌で墜落した曲芸飛行家アート・スミス氏に対して、慰問の募金が始まりました。

大隈重信首相、金子堅太郎子爵、渋沢栄一男爵、長岡外史中将(帝国飛行協会会長)が個人として連盟で、スミス氏が飛行した各地の市長、新聞社に、依頼状を発送することになっています。

その他の出来事

【社会】
逓信省が貯金総額2億5300万円と発表。
前年より5000万円増で過去最高の増加、大戦景気。

【第一次世界大戦】
・ヴェルダンの戦いで、ドイツ軍がフロワデテール小要塞を攻撃も、フランス軍の反撃により撤退
ドイツ軍の様子を見ると、これまでよりヴェルダン戦に活気がなく、いくぶん東部戦線に兵が割かれたものと思われます。

・フランスの駆逐艦「フルシュ」がアドリア海で、オーストリアのUボートにより撃沈される
・ドイツの商用潜水艇「ドイッチュラント」が、アメリカに向け出港。非武装でイギリスの海峡封鎖を避け、中立国アメリカからの物資を輸入するため。(代わりに、化学薬品を輸出)
・ソンムで準備砲撃開始

1916年(大正5年)6月24日

寺内正毅に元帥の称号


寺内正毅

寺内正毅朝鮮総督に対し、元帥の称号を賜る旨の御沙汰がありました。

寺内元帥は、長州藩出身。明治4年に陸軍少尉、12年歩兵少佐、15年フランス留学、日清戦争には兵站の責任者、明治39年に陸軍大将となりました。

士官学校校長、教育総監、参謀本部次長等を歴任、桂園時代には陸軍大臣、明治43年には韓国統監となり、初代の朝鮮総督となっています。

寺内伯爵は来年の3月で大将の停年となるため、元帥になるという噂はありましたが、来春のことで、このタイミングでの元帥の発表がされるということには驚きの報道があります。

元帥への奏請は、山県有朋公がすすめた模様です。
なお海軍の元帥が東郷、井上の2名であることに対し、陸軍元帥が7名となったことには、元帥には政治的思惑があるのだろう、とも報道されています。

内務省の発禁濫用は違憲(東京朝日)

6月21日に、東京の新聞 3、4紙に対して発売禁止が命じられ、23日にも発禁がありました。この件に関し、東京朝日新聞が批判の社説を掲載しています。

(要旨)

21日の発売禁止は、東京地方裁判所での大隈首相爆弾事件に関する弁護士の弁論を、そのまま記載されたためと言われている。
これが事実だとすると、裁判官が公開したことを、内務省が公表を禁止したもので、新聞紙条例の濫用である。
特に言論の自由を尊重すると標榜する大隈内閣は、非難されるべきである。

元来、裁判所の弁論を公にすることは、裁判の公正を保持する上で、必要なことである。先進国でも憲法で保証された権利であり、日本の憲法でも保証されている。
安寧秩序、風俗を害する場合には秘密とすることができるが、決して軽軽に行うべきではない。

23日の発売禁止は、パリの経済会議に対する武富蔵相の批評を掲載したからという。元来、大臣が公表したものを、別の大臣が安寧秩序を害すると言い、発売禁止をしたということは、すこぶる奇怪な現象である。新聞紙を取締るより、大臣を取締るべし。

また、これは少なくとも内閣の不統一を暴露するものである。
武富蔵相の批評も、安寧秩序を害するものではなく、察するところ何か外国に対して都合が悪いところがあるのだろう。

言論界は、大隈内閣の反省を促す必要がある。

その他の出来事

【陸軍】
神尾光臣(東京衛戍総督)が陸軍大将に昇進

【アメリカ】
ニューヨークでウェスト・エンド線が開業

1916年(大正5年)6月25日

出来事

【学問】
フランスの数学者アンリ・ポワンカレ(故人、ポワンカレ大統領の従兄弟)著『科学の価値』が刊行される。訳者は田辺元(東北帝国大学講師、思想家)

【中国】
海軍が独立を宣布。臨時約法の回復を要求。

【タイ】
バンコクの中央駅 フワランポーン駅が開業

訃報: トマス・エイキンズ (アメリカの芸術家)


自画像

1844年フィラデルフィア生まれ、享年71歳。

写実主義を重んじ、美術の授業に女性に男性のヌードモデルの絵を描かせたとして、美術学校を解雇された経験もあります。

医学校での解剖の授業を描いた「グロス・クリニック」は、手術の現場を描く衝撃的なもので議論を呼びましたが、今では19世紀の手術状況を表す貴重な資料にもなっています。

その他、リアリズムを追求した写真や彫刻も手掛け、アメリカ近代美術の父という評価もあります。


グロス・クリニック(1875)

1916年(大正5年)6月26日

中国海軍 独立の詳報

中国海軍の第一艦隊は独立に際し、宣言書を発しています。

・国家存亡の危機にあたり、海軍も黙視することができない。
・護国軍(南方派)と連絡を一致し、協同で危機を救おうと交渉中である。
・黎元洪新総統になったが、まだ約法の回復はなされておらず、総統の周囲に牽制する勢力があるのだろう。
・約法の回復、国会の召集、正式内閣の成立まで、上海で独立した行動をとる。
・大局が安定すれば、政府の指導の下に戻る。

北京警護の軍隊が交替

故袁世凱の親衛隊だった拱衛軍に対し、黎元洪総統は袁世凱墓地警護の目的で、河南省に移動する命令を発しました。
慰労金として俸給1ヶ月分が与えられています。

これと入れ替わり、首都の警護は第一師団(段祺瑞の影響力大)を充てることになっています。

その他の出来事

【文化】
萩原朔太郎、室生犀星が共同で、感情を主体とした新象徴詩の雑誌「感情」を創刊

【訃報】
大米龍雲:連続尼僧殺人事件の犯人として、東京監獄で死刑。
(関連記事:1915年11月8日 大米龍雲に死刑判決

【訃報】
チャールズ・ナイルス(アメリカ人曲芸飛行家)
ウィスコンシン州の曲芸飛行で墜落し死亡
関連記事:1915年12月11日 ナイルス氏の曲芸飛行

この週に生まれた人々

坪内 逍遥シェイクスピア翻訳中、早大教授57
クルト・シュヴィッタースハノーファーで製図工29
岸田 劉生画家25
村岡 花子山梨英和女学校教師23
竹鶴 政孝摂津酒造社員22
エーリッヒ・レマルクギムナジウム在学中18

索引語:アメリカ イギリス ラテンアメリカ諸国 ロシア 中国 地方 寺内正毅 政治 文化 満州 産業 社会 第一次世界大戦 経済 航空 訃報 陸軍

Posted by 主筆 at 2016/06/27/12:46

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