百年前新聞

2017-12-17

百年前新聞とは?

1916年(大正5年)7月4日~10日の出来事

大正5年7月5日

1916年(大正5年)7月4日

島崎藤村(44)らがフランスから帰国


Wikipediaより

4日神戸着の日本郵船熱田丸にて、島崎藤村(作家)、正宗徳三郎(画家)が帰国しました。

島崎氏によると

・4月29日に3年余り住んだパリを辞し、ベルギーの仮政府のあるアーブルに向かった
・ドーバー海峡を渡る際は、潜航艇の出没が無いか、悲しいような心配をした
・ロンドンでは音楽会やシェークスピアを見た
・5月9日にロンドンを出発し、南アフリカ、上海を経由して、いよいよ神戸に到着した

「政府がボルドーから帰ってきてからは、パリもにぎやかになり、久しく閉まっていたオペラ座も開かれた。

ソルボンヌ大学では、音楽会を開いたり、アカデミーフランス会員などが来回して愛国精神を鼓舞する演説をしたりしていた。

最近になってルーブル美術館の一部は開かれ、コンコルドでは絵画、彫刻の展覧会が行われた。

戦争のために打撃をうけたもののうち、我々にとって最も苦痛に感じるのは、印刷屋が休業しているため、雑誌がわずか2種類しか出ていないことだ。著作も戦争を主題としたものが多い。

フランス文壇にとって打撃なのは、フランス文学者のペニー氏が戦死したことである。今度、同氏のために記念出版計画がある。」

唐紹儀、孫洪伊が入閣拒否

6月30日に発表された、段祺瑞内閣の閣僚に任命された唐紹儀、孫洪伊の両名は、入閣辞退の返電をするとともに、上海の新聞紙に段祺瑞に対する意見を発表しています。

・旧約法では、内閣員の任命は議会の権限に属するものだが、今回の内閣組織は独断で行われている
・目下、国会がないため、南方派の承認を要すると考える
・だが、内閣の組織にあたり、南方派には何の交渉もなかった
・このような決め方では、たとえ旧約法を復活したといっても、尊重する誠意を認められない

・交通部、内務部、財政部の要職に北方派を置き、段総理が陸軍総長を兼任しているのは、狡猾な手段である

その他の出来事

【外交】
林権助が駐華公使に任命される。

【社会】
鳥取・境~東京・汐留間の鮮魚輸送試験が行われる。7日に東京に到着、61時間で良好な結果が得られる。

訃報: アラン・シーガー(アメリカの詩人)


Wikipediaより

1888年ニューヨーク生まれ、享年28歳。

アメリカの詩人として、パリのカルチェ・ラタンに行きましたが、第一次世界大戦に際し連合軍の一員として参加するべく、フランス外人部隊に所属しました。

ソンムの戦いにて戦死しましたが、死後1年経って手紙や手記をまとめた詩集が出版され、その「若いうちに栄誉ある人生の終わりをむかえたい」という主題が、後世の若者に思想的な影響を与えています。(ジョン・F・ケネディなど)


1916年(大正5年)7月4日


寺内正毅の上京


寺内正毅

6月24日に元帥となった寺内正毅が上京しました。

寺内伯は出迎え嫌いとして知られていますが、東京駅に詰めかけた約300人の出迎えに愛想よく応対しています。

上京の目的は謎に包まれており、ロシアに行くためだとか、後継内閣のためだとか、朝鮮総督府の予算のためなど、いろいろな噂があります。

出迎えの諸氏の中には、石黒忠悳(元陸軍軍医総監、貴族院議員)、仲小路廉(貴族院議員)、柴田家門(貴族院議員)、村井吉兵衛(実業家)、高田愼蔵(実業家)、出羽の海、変わったところでは日比野雷風(剣客)が来ています。

みなビリケン様の御利益にあやかろうとする連中です。

日銀が利下げを実行

日本銀行が公定歩合を2厘引き下げ、日歩1銭6厘とすることを発表しました。
即日、実施されます。

関連記事:4月15日 1銭8厘への引き下げ

市中金利と公定歩合との乖離が大きくなっているため、むしろ遅きに失したぐらいですが、それでも引き下げをしたことに対しては、市場から評価されています。

ただ、まだ市場金利との差が4厘~5厘ほどあり、さらなる利下げを求める声もあります。

中国情勢

中国政界の実力者である馮国璋が、先日(6月26日)に独立を宣言した海軍に対し、旧約法が復活したため、独立を取り消すよう打電しました。

また、満州軍閥の張作霖は黎元洪総統に対し、「南方派は新政に従わないため、討伐すべき」と打電しています。

その他の出来事

【地方・鉄道】
信濃鉄道(現JR東日本大糸線の一部)が全線開業

【中国】
中国財政部、各省の私借款と外債を禁止

1916年(大正5年)7月6日

大隈首相が辞意を内奏


大隈重信首相は、日露交渉の完了を機に、首相を引退する意向を表明しています。

6月23日に参内した際、大正天皇に辞意を表明した模様です。
後継者に関しては、元老に御下問されることを述べましたが、大隈首相個人の意見として、寺内正毅、もしくは加藤高明が首相の器であることも言上しました。

元老の松形正義、山県有朋ともに、熟慮の上奉答する、と回答しているようです。

寺内正毅と大隈首相の会談

上京中の寺内正毅朝鮮総督は、6日参内して元帥昇進の御礼を言上した後、永田町の首相官邸に赴きました。

大隈首相、石井菊次郎外相と、日露協約についての話をしたと思われますが、首相後継についても話がされてると思われます。

(*加藤高明の同志会を与党とした連立内閣を提案。寺内正毅の官僚派とは主義が異なる。)

中国情勢

南方派の軍務院代表が、4日北京に到着し、黎元洪新総統と面会した模様です。

席上で、袁世凱の帝政を主導した帝政派幹部を処罰するよう、要求したようです。

通学券への姓名記入に、女学生が苦情(東京市電)

7月1日より値上げした東京市電で、新たに通学乗車券に所持者の氏名、校名、年齢を記入して、必ず車掌に提示することになっています。

これに対し、他人に自分の氏名を知られるのを嫌がる女学生から、苦情が出ています。

奥田市長の談


女学生が困るというが、私はそうは考えん。

私の電車値上げに対する方針は、割引の特典をなるべく制限することである。これは市の財政上から、値上げをした本来の目的からである。

だからもし女学生で氏名を知られるのを嫌な人は、普通回数券で行ってはどうかと思う。

まぁこれは私が市長として、市電気局の経営責任者としての意見じゃが、また教育に意見を持つ一個の私としても、ごく遠いところ、例えば高輪から本郷・御茶ノ水へ通うような長距離でない限りは、なるべく徒歩で学校へ往復する、というのが、教育上、徳育上、体育の上にも効果があろうと考える。

要するに、もし通学乗車券が女学生諸君に不便なら、なるべく徒歩主義を採ってもらいたいのじゃ。

(*奥田義人は、元文部大臣)

その他の出来事

【アメリカ】
・ニュージャージー州でサメによる被害(遊泳中の人が足を食われる)
 映画「ジョーズ」のモデルとなる事件の一つ

・レズリーズ・ウィークリーに、星条旗の服装であごひげをたくわえた「アンクル・サム」の絵柄が表紙に掲載される
(アメリカ人のモデル「アンクル・サム」のポピュラー化の始まり)

訃報:オディロン・ルドン(フランスの画家)


自画像

1840年生まれ、享年76歳。

印象派が全盛の時代に、幻想の世界を描く独自の世界を貫かれています。


泣く蜘蛛

1916年(大正5年)7月7日

衆議院議員選挙法改正案が省議決定

衆議院議員選挙法の改正案が内務省で決定し、調査会に回ることになりました。

概要は、下記の通りです。

・議員定数を450名とする
・現行の議員総数381名を433名とする
・官吏は議員を兼任できないこととする
・国策会社の役員も議員を兼任できない
・選挙法違反者は、一定期間立候補できない
・戸別訪問の制限:夜間訪問の禁止

議員は人口13万人あたり1人と決まっていましたが、人口が急増しているため、議員定数を設けたこと
人口増にともなって、現行の議員数も増やすこと

その他は、これまでの弊害を除くための改正です。

なお、選挙権の拡張に関しては全く触れられておらず、議論を呼びそうです。

また、以前問題となっていた女性の選挙運動禁止に関しては、特に言及はありません。

日露協約に関する報道

第一回協約からの経過(新聞社説より)

第一次日露協約は、明治40年(1907)に締結されました。
当時は日露戦争が終わって間もなくであり、日露が再び戦うという風説もあったため、日露の親善をはかる意味での協約でした。

第二次協約は明治43年(1910)、アメリカの資本家が満州において政治的投資を試み、日露両国を脅かすことになったため、「第三者の侵害を防止すると同時に、もしかかる事態が生じた場合は、両国は共同的防衛策を採る」旨が書かれています。

第三次協約は、明治45年(1912)に、アメリカ主導の四国借款団が満州に対して干渉してきた、辛亥革命により日露両国の相互の地位を確保しておく必要がある、ことから結ばれています。

今回の協約は、互いに敵対国に味方しないという条項を含み、ほぼ同盟に近い内容になっています。

また従来の協約では、「満州・蒙古」に地域が限られていましたが、今回は「東洋」と広い範囲が対象となっており、中国本土も対象範囲になっています。

足尾銅山煙害問題

足尾銅山からの煙害による被害民が、山林・畑地に対する賠償要求をしていましたが、銅山側は被害調査を正確に行い、その上で補償すると回答しました。

被害者側には激高して「最後の行動をとるべし」としたものもありましたが、さらに12日に交渉会を開くことになっています。

その他の出来事


【社会】
日露協約記念祝賀会が東京で開かれる。繁華街と市電に両国の国旗が掲揚される。

【イギリス】
ロイド・ジョージが陸軍大臣に就任(画像)
*先日、死亡したキッチナー元帥の後任(6月5日)


1916年(大正5年)7月8日


日露協約に関する報道

外務省が協約正文を公表(下記、概要)

・日本国は、ロシア国に対抗するなんら政治上の協定、または連合の当事国とはならない。
ロシア国は、日本国に対抗するなんらの政治上の協定、または連合の当事国とならない。

・両国の極東における領土権、または特殊利益が侵迫された場合は、日本国およびロシア国は、その権利及び利益の擁護、防衛のため、相互の支持または協力を目的として、執るべき措置につき協議する

タイムズ(ロンドン)評

この協約は、イギリス政府および連合国諸国の賛同を得たものと察せられる。
この日露協約は、ほとんど同盟に等しいものであり、今回の戦争に際して日露の国際関係が満足な発展をしたものである。

また、日本がロンドン宣言(単独不講和)に加盟したのと同様、日本がヨーロッパの歴史的強国に肩を並べ、世界政治の大潮流に入ったものである。

ニューヨークタイムズ(アメリカ)評

日露協約は、中国に対する日露両国の態度を規定したもので、アメリカにとって危険であると言える。

疑いもなく、この協約によって日本の中国への保護権は拡大され、中国の列国の関係も複雑となるだろう。

アメリカと中国との条約もあり、中国の門戸開放主義の維持に関して、直接、多大な影響があるだろう。

その他の出来事

【アメリカ・文化】
コカ・コーラが、コンツアーボトル(中央部分がくびれたボトル)を採用し、発売を開始する。
(関連記事:1915年11月17日

【アメリカ】
メイン州(東海岸北端)に、ド・モン卿国立公園が設立。
現在のアーカディア国立公園

【ロシア】
中央諸民族へ徴兵令

1916年(大正5年)7月9日

寺内正毅が山県有朋と密談

午前9時59分着の列車で、寺内正毅が小田原に到着。山県有朋の別荘「古希庵」を訪れました。
それから人払いがされ、午後4時頃まで二人きりで何やら話をしています。

5時48分発の列車で東京に戻る際、新聞記者がいろいろさぐりを入れましたが、何を聞いても撃退されています。

その他の出来事

【社会】
大阪府北河内郡および隣接の京都府農民5,000人が、琵琶湖の放水に反対、内務省出張所に抗議

【文化】
アメリカのニューヨークタイムズが、ヨーロッパでの腕時計の流行に関する記事を掲載。懐中時計が主流だったが、腕時計が主流になってきている、第一次世界大戦で、兵士が正確な時間を瞬時に分かる必要性が生まれたため。

訃報: 上田敏(英文学者)


Wikipediaより

京都帝国大学教授、文学博士の上田敏氏が逝去しました。

博士は明治7年(1874)東京の築地に生まれ、東京帝国大学ではラフカディオ・ハーンから英文学を習いました。

京都帝大では、菊池寛を教えています。

「帝国文学」の創刊に関わるなど、文学活動も行ない、ヨーロッパの文芸思想を日本に紹介されています。

新しい言葉を作るのも好きで、シンボル(象徴)も上田敏氏が初めて使った言葉です。

1916年(大正5年)7月10日

大隈首相 爆弾事件の判決

1月12日夜の、大隈首相の暗殺未遂事件に対する判決が、東京地方裁判所で行われました。傍聴席は満員となっています。

無期懲役: 福田和五郎、下村馬太郎
懲役15年: 鬼倉重次郎、和田政吉、前田九二四郎

爆発物取締罰則違反により死刑に処すべきところですが、爆弾が不完全で被害者が幸に無事であるため、罪が減じられています。

なお検察側、被告側の両方が控訴しています。

簡易生命保険法公布

第37議会で協賛を経た簡易生命保険法が公布されました。
逓信省の為替貯金局では実施準備に取り掛かっています。

関連記事:2月7日衆議院で簡易保険法が通過

その他の出来事

【地方】
・豊橋駅(愛知県、東海道本線)の新駅舎が完成。1908年に陸軍の第15師団が豊橋にでき、輸送量が増加したことにともなう。
・東海道本線の貨物支線として、清水港線が開業。

・山口県庁舎、県会議事堂が竣工
(現:県政資料館

【社会】
上野公園で婦人子供博覧会開催

【朝鮮】
朝鮮の古墳および遺物の保存規則について調査会規程を制定。
朝鮮保護牛規則公布。

【フランス・芸術】
彫刻家のオーギュスト・ロダン(75)が、脳充血により転倒。
以後、健康がすぐれず、自宅から彫刻がしばしば盗まれるようになる。

この週に誕生日を迎えた人々

巌谷 小波おとぎ話作家46
マルセル・プルースト「失われた時を求めて」執筆中45
カルビン・クーリッジバーモント州副知事44
佐佐木 信綱歌人44
佐藤 紅緑大衆小説家42
エルンスト・ブロッホドイツ 哲学者31
賀川 豊彦アメリカ留学中28
ジャン・コクトー詩人・作家27

索引語:アメリカ イギリス フランス ロシア 中国 公害 司法 地方 大隈重信 寺内正毅 山県有朋 政治 文化 朝鮮 産業 社会 第一次世界大戦 経済 美術 訃報 議会 鉄道

Posted by 主筆 at 2016/07/11/13:41

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